黒田日銀「マイナス金利」政策導入 理解のためのホンネとタテマエ

日本銀行は29日の政策委員会・金融政策決定会合で、2%の物価目標を早期に実現するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定。午後の市場は大きく反応した。

まず、日本経済新聞が12:23に日銀政策決定会合で「マイナス金利について議論」されたと報じたことで、市場がにわかに揺れる。

その後、日本銀行のホームページで”「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入”が公表されたことが伝わると、為替は1ドル119円台前半から、一時121円台前半へとジャンプ。以後は乱高下をしながらも、前日比で円安・株高の展開となった。



今回の政策の根幹となる「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」について、日銀が公表した文は以下。

 

(1)「金利」:マイナス金利の導入(賛成5反対4)
金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。
具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。
貸出支援基金、被災地金融機関支援オペおよび共通担保資金供給は、ゼロ金利で実施する。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160129a.pdf

 
したがって、まず大前提として、

Q1:預金金利がマイナスになってしまうのか?

ホンネ
「これで直ちにあなたの預金金利がマイナスとなることはない。」

いや、バカにしてると週明けマジで銀行の窓口に来る人いるので。
万が一、価格.comで金庫の値段上がっててもスルーでお願いします。

 
また、これから次の質問が想起される。

Q2:「金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する」とのことだが、そうすると金融機関は日銀に預けている資金を全部引き出すのか?

タテマエ
「具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。」

 

 
ホンネ
「なので、その『マイナス金利』に該当する部分は『預けすぎペナルティ』のようなもの。実際には『マイナス金利』が適用される当座預金はほとんど無いのではないかという観測もある。」


ここまで理解していれば、飲み屋でも十分話に着いていけるのではないでしょうか。
しかし日銀は、この「マイナス金利」という言葉のインパクトと、この政策の複雑さとのギャップが、市場との対話において障害となる可能性があると判断したのでしょうか、政策の公表と同時に別紙でQ&A(PDF)を公開しています。

このエントリでは、その内容を、上記のように日銀による解説(タテマエ)と、市場関係者の反応(ホンネ)部分とで再構成してお伝えして参ります。



Q3:結局マイナス金利の適用って当座預金の一部だけじゃない?意味あるの?

タテマエ
「金融取引の価格(金利・株価・為替相場など)は限界的な損益によって決まる。
マイナス金利が当座預金残高の全体にかからなくても、限界的な増加部分にかかれば、新しい取引によって当座預金が増えることに伴うコストは▲0.1%である。
金融市場ではそれを前提として金利や相場形成がなされる。」

ホンネ
「追加的に金利を支払ってまで日銀に資金を預けようという動機はほぼないとみられている。
それでも、▲0.1%という数字には、日銀が望むペース以上に金融機関が当座預金残高を積み増すことへの懲罰的指標としての意味合いはある。」

 

(2016/04/12 追記)

実際に実施する過程で報告された情報をもとに、上記の記述に関する追記を以下Q4にて行っております。あわせてご参照ください。



Q4:「今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。」とあるが、どこまでやる気なの?

タテマエ
「今回の政策と同様に階層構造方式を採用しているスイスでは▲0.75%、スウェーデンでは▲1.1%、デンマークでは▲0.65%など、大きめのマイナス金利が適用されている。」

ホンネ
「実際に『マイナス金利』が適用される当座預金がほとんど無いようであれば、この数字をさらに引き下げる意味は乏しい。」

 

(2016/04/12 追記)

実際に、金融機関全体におけるマイナス金利が適用される当初の政策金利残高は10~30兆円程度となる見込みであることが日銀より発表されました。

したがって、単純計算をするならば、金融機関全体で年間100~300億円程度のコストが発生すると考えられます。

上では「実際に『マイナス金利』が適用される当座預金がほとんど無いようであれば」と記載しましたが、現実には金融規制・リスク管理等の観点から、マイナス金利政策を目の前にしても、どこにも動かしようのない資金が発生しています。

したがって、マイナス金利のさらなる引き下げにより促される現預金保管コストの上昇が、金融機関の行動を変えることは十分に考えられることとなりそうです。

もちろん、それに伴う我が国の金融機関の潜在的なリスクについても日銀はケアを求められることになります。


Q5:金融機関がマイナス金利の適用を回避しつつ、投融資も増やさなかったとしたら、現金(金利0%)で保有したくなるよね?

タテマエ
「その可能性を塞ぐため、金融機関の現金保有額が大きく増加した場合は、その増加額を当座預金でゼロ金利が適用される部分(日銀は「マクロ加算残高」と呼ぶ部分。上の方のツイートにある図を参照。)から控除し、マイナス金利がかかるようにした。」


Q6:この政策は金融機関の収益を悪化させるのでは?

タテマエ
「悪影響を及ぼす面がある。今回のマイナス金利の導入に当たっては、 金融機関収益への過度の圧迫により金融仲介機能がかえって低下するようなことがないよう、3段階の「階層構造」を採用し、ある残高まではプラス金利ないしゼロ金利とすることとした。」

ホンネ
「あらやだおじいちゃん、台風が来るからって、今日の銀行株セクターの値動き見に行っちゃダメよ。」


Q7:マネタリーベース増やす目標ってもうヤメたの?
   日銀当座預金が増えなければマネタリーベースは増えないと思うんだけど?

タテマエ
「マネタリーベースの拡大(現在の方針は年間約80兆円の増加)は維持している。
これに伴って、日銀当座預金残高は、マクロ的に増加していくことになる。
こうしたもとで、マイナス金利が適用される部分が適切な規模となるように、適宜のタイミングでゼロ金利が適用される部分(マクロ加算残高)を増加させることとした。」

ホンネ
「そう上手く二兎を得られるとは断言できんだろ…。」


Q8:マイナス金利でも日銀は国債を買えるの?買うの?

タテマエ
「当座預金金利のマイナス化によりイールドカーブの起点(ざっくり言うと:期間の短い国債の金利)を引き下げることで、長期金利を含む金利全般により強い下押し圧力を加えていく。
長期国債の買入れにあたっては、マイナス金利分だけ長期国債の買入れ価格が上昇(金利は低下)することで釣り合うので、買入れ自体は可能と考えられる。
ただし、国債市場に与える影響を注意深くみながら、長期国債買入れを推進していく。」


Q9:金融機関のシステムとか仕様上、負の金利を想定していなかったなんてことはないの?

タテマエ
「(コメントなし)」

ホンネ

 」