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会社の一大不正に切り込んだ新入社員が話題に 三菱自、燃費不正問題の社外調査報告書を公表

三菱自動車は2日、不正が発覚していた燃費偽装問題について、特別調査委員会からの調査報告書を受領し、同社ウェブサイト上に公開した。

プレスリリース「特別調査委員会からの調査報告書受領に関するお知らせ」 | ニュース・イベント | MITSUBISHI MOTORS



特別調査委は、「約25年間にわたり、その間に製造・販売されたほぼすべての車種について、法規で定められた惰行法を用いて走行抵抗を測定せず、高速惰行法により測定した走行抵抗をもとに、惰行法により走行抵抗を測定したかのような体裁を有する負荷設定記録を作成できる逆算プログラムを使用し、さらに測定期日や測定場所などについて事実と異なる記載をした負荷設定記録を作成し、これを提出して型式指定審査を受けていた(調査結果概要)」などと報告。

走行抵抗の恣意的な算出や改ざんが相次いでおり、『性能実験部ができないことを「できない」と言うことが容易ではない部署になっていた』と指摘した。

 


同日公開された、264 ページにも及ぶ「燃費不正問題に関する調査報告書」(本編・公開版)では、走行抵抗測定方法の誤りに気付く者がいたにもかかわらず、同社の性能実験部が誤った測定を止めることができなかった事実を報告。
その中では、性能実験部が新人研修の一環として行っていた「新人提言書発表会」においても、2005年2月当時の新入社員からも当該指摘がなされていたことが記載されていたことが話題となっている。

「新人提言書発表会」においては、新入社員に対し、入社4年目程度の「メンター」と呼ばれる先輩社員が、それに向けた指導を行うこととなっており、その指摘を行った新入社員F氏には性能実験部・認証試験グループ所属のE氏が付いた。

新入社員F氏は、メンターE氏の提案を受け、「国内審査惰行の必要性と高速惰行との相関」というテーマで、当記事冒頭で引用したような、法規で定められた惰行法を用いて走行抵抗を測定すべきところ、審査時に高速惰行法のデータを使うことが慣例化してしまっていることを発表会で指摘。
コンプライアンス遵守の観点から疑問であり、走行抵抗の測定は惰行法によって行うべきと明確に提言していたという。


報告によれば実際には、本提言を行うようF氏に提案したのはE氏であった。
2001年入社のE氏は、認証試験グループに配属され、型式指定審査業務に従事する過程で、当該不正行為の引継も経験しており、これをコンプライアンス上の大きな問題であると認識。かねてから上司らに話すも、「すぐには対応できない」と回答されるばかりで、不正行為は是正されることがなかったという。

E氏は上司にも本件を「新人提言書発表会」で取り上げることを相談。上司は積極的な姿勢を見せなかったが、否定的な意見は述べず、前述のF氏の発表に至った。
しかし、その場で当時の性能実験部長は明確にこの問題を認識したコメントをしつつも、性能実験部の上長ら20名あまりの参加者の反応は鈍く、不正な実務が是正されることはなかった。


大会社の若手が一大不正を指摘しつつも、組織として是正されなかったストーリー。
他の組織も大いに参考になる調査報告書となっている。