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「会社設立 freee」、みずほ銀行口座開設と連携記念 使った感想をホンネで書いてみた

会社設立支援サービスである「会社設立 freee」を運営する freee株式会社が12日、同サービスと、みずほ銀行の提供する「法人口座開設ネット受付」サービスとの連携を開始したことを発表した。

freee とみずほ銀行が起業支援の取組を強化 | freee プレスリリース



同社はプレスリリースでこの連携について、「会社設立手続きと法人口座開設の手続きをワンストップかつ最低限の時間で完結できる取り組みを共同で提供し、起業時の多忙な時期に経営者がより本業にフォーカスできる仕組み作りを推進」していきたいとしている。

そこで、今回のエントリでは、実際にこの「会社設立 freee」の使い心地はどうなのか、利用者目線での実状を記していくこととする。

当然にPR記事ではないので、残念だなと思う点を積極的に記載していこうとは思うが、結論から言えば、十分実用に足るレベルのサービスであった。
他人資本に関係者外部が含まれないようなケースであれば、積極的に利用しても良いのではとも思うところだ。

 

まず最初に言及しておかなければならないのは、今回のプレスリリースで、freee 側は「会社設立 freee」というサービスを「5分で会社設立ができるサービス」と表現していたが、当然そんなことは有り得ないという点である。

司法書士、公証役場と法務局とのやり取りが時間の大部分を占めることを知っていれば、容易に想像つくはずだが、盛りすぎをスルーするのもどうかということで。5日で設立するのすら大変だと思う。

 

第1フェーズ:定款基本情報の入力

「会社設立 freee」でユーザーアカウントを作成した後の最初の作業は、「定款」作成のための基本情報の入力。
定款や登記簿に記載される役員等の名前と住所(各人の印鑑証明書との一字一字、数字・漢数字の別を含めた完全な一致を確認すること)、各人が振り込むべき資本金等の額などを入力すると、以後必要となる定款以外の資料などにもそれらの情報が引き継がれていく。

 

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事業目的はひな形から選ぶことが可能だが、自由記述も行える。
かつて「目的 1 一切の事業」などという制度をナメきった定款もあったが、そういったものも作成は可能なようだ(非推奨)。


流行の兆しを見せつつある、締めの「その他適法な一切の事業」も当然書けるが、行政の許認可が必要な業務領域だと、丁寧に書いておく方が後々困らないかも。



以下の情報をすべて記入し終えると、設立の最初の準備ステップが終わる。
・会社の名称
・その住所
・各役員・出資者の情報
・事業内容
・資本金と株式の発行価額、発行可能株式総数と譲渡制限
・取締役会の有無と取締役の任期
・決算期
・広告の方法(電子の場合は電子公告掲載URL)
・連絡先電話番号

あと、次のフェーズに行く頃には会社の実印を作っておく必要があります。

 

第2フェーズ:司法書士、公証役場、法務局。

上記の入力で、一応の定款は出力可能になっています。
この後は、この「定款」を公証役場に認証してもらう手続きが必要ですが、印紙代を節約したい場合には電子認証が推奨されています。

この電子認証も、freee 側と提携している司法書士さんを通して行うことが可能です(費用は5,000円)。
私もそうしましたが、公証役場との簡単な打ち合わせも行ってもらえるので、非常にラクでした。


次に、「会社設立 freee」では、第2フェーズの2番目のステップにて、「専門家に電子認証を依頼する前に公証役場で定款の内容を見てもらいましょう」との案内が記載されています。

 

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ですが、ここですんなり作成した定款が通ることもありませんので、この記述の通り行けば、ユーザー側で公証役場の指示通り定款を修正してから司法書士にメールすることになります。

しかしここで曲者となるのが、定款がPDFで出力されること。
ダウンロード出来るのは良いものの、普通の人にはそれを編集することが出来ません。

要は定款を公証役場の指示通り修正するのがやりにくくて仕方ないということ。
個人的にはAcrobat Proの無料トライアルを申し込んで無理矢理どうにか対応しましたが、元の定款ドキュメントのフォントがMac 向けなので、一般的なWindowsのPCユーザーとしてはそれらも全部変更してからという無駄作業のオンパレード。

エンジニアさんが資料の美しさにこだわる気持ちも分かるのですが、定款を役所以外の他人に見せることなんて殆どないんだから、ビジュアルよりも実務優先に設計した方が良いのではないかと思います。

そこで、freee さんへの最初の一言は、こうした定款のような出力ドキュメントについて、

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司法書士との提携における運用面で改善出来るならそれがいいんでしょうけれども、最低限の費用でお願いしているため、ここはどうにかなると良いのではないかなあと。

PDFは自動化のため仕方はないのだとは思いますが、運用でもう少しカバー出来るような。まあでも基本無料のサービスなので贅沢なお願いになりますかね。


続いて、無事、定款が認証されれば公証役場に受け取りに行くことになります。(事前に受け取り日の予約をする必要があります。)
当日に修正事項が出て来たらと思うとヒヤヒヤはしますね。


持ち物リストに「発起人の個人実印(当日の修正がある場合に必要)」とありますが、委任状*1を他の発起人から預かって代表者が取りに行くパターンだと現実的にはそれが困難であることも多いのではと思います。52,000円程度の現金もお忘れなく。


この後は法務局に登記関係書類を提出し、問題がなければ登記が完了し、完了日には登記簿謄本の取得が可能になりますが、この登記関係書類には「払込を証する書面」の中に各出資者からの資本金が集まっていることを証明する書類が必要となります。

 

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つまり提出までに各出資者から代表者の口座に各々の出資額を振り込ませておく必要があり、それを証明するために通帳のコピーや入出金明細の画面のハードコピー(ネット銀行の場合)を印刷した紙を用意することになるわけですが、この紙には「振込の入出金額や振込人と日付」「口座名義」「銀行名や支店、口座番号」が明記されている必要があります。
(私は住信SBIネット銀行口座に出資者からの振込を受け付けたので、ここで『入出金明細』画面に「銀行名や支店、口座番号」が記載されておらず、つまづいてしまいました。*2


私のことを言えば、これらの書類を法務局に持ち込むために無駄に休暇を取得するわけにもいかず、郵送することにしました。

法務省:商業・法人登記の郵送申請について

会社設立ひとりでできるもん-郵送でも出来る!商業・法人登記申請



この場合は法務局側から、提出した書類の補正の指示等を電話で受ける必要がありますので、登記申請書には必ず鉛筆書きで電話連絡先を明記しておきましょう。
私の場合は不要でしたが、補正の手続きもだいたい郵送で行えるそうです。

 

第3フェーズ:設立後の各所への届出

こうして登記が完了し、登記事項証明書を受け取ることが出来れば(郵送・オンラインによる取得も可能)、税務署・都道府県税事務所・市役所(法人市民税関係部署)や年金事務所等、各所への書類提出が必要です。
売上がなくても均等割のように最低限の税金はかかりますからね。

ここでも、事前に入力していた情報に基いて書面の自動作成・出力が可能ですが、様式では1枚ものであるはずの資料がズレて2枚になってPDF出力されているものが散見されます。

 

https://i.gyazo.com/ff9c45349cd6d5453c74167b3828ed8f.png

 

・・。


さすがにこれを税務署に送りつける気にはなりませんでしたね…。
また、先ほどと同様に、この資料も通常では新設する株式会社の個別事情に合わせて編集が出来ないため、やっぱり

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に尽きます。

最後に、冒頭のリリースでは、この画面からワンストップで、みずほ銀行の法人口座開設まで入力を自動で引き継いで行えるように連携を強化していくとしていましたが、

https://www.freee.co.jp/news/wp-content/uploads/sites/2/2016/09/shin_mizuho-2.png



みずほの口座なんて当然、申し込めば開設できるといった類のものではないことには留意する必要がある。
ネットバンクでも口座を作れないことがあり得るので、信金その他、そういうことになった際にどう対応するかはシミュレーションしておいて損はないかもしれませんね。(それなりに信用力がある人はそもそもこのサービスを使わない気がするので余計にね。)


以上、「会社設立 freee」の使用感について、みずほ連携記念で書いてみました。
冒頭でも言いました通り、結局私としては、気になることはネットで調べ、あとは本も1冊も買わずに、このサービスで実際に会社を設立できたので、個人的に周囲には「会社設立 freee」についてポジティブな評価を伝えております。

実際、このサービスを利用するだけでは freeeさんには殆どおカネは落ちませんので、会計ソフト使ってね!というメールがたまに来てもあまり腹を立てないであげてもらえればと思います。

 

BOOKS

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*1:「委任状」の日付は定款作成日以前である必要があることに超留意。

*2:SBIネット銀行では有料で、それらが記載された入出金明細を郵送してもらうことが可能でしたので、それで無事対応できました。