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米国消費者のクレジットカード残高、米国史上最高を更新

米FRB が公開した最新の消費者信用残高データによると、米国の消費者が利用する2017年6月時点のクレジットカード債務の残高は約112.3兆円(1ドル=110円換算)となり、直近のサブプライム危機直前における史上最高値を更新した。

 

2007・08年以降の金融危機により、米国家計の債務残高は一時的に下降傾向を示していたが、政策的にも長期間にわたり異例の低金利が維持され、賃金も回復途上にあり、消費者の債務残高は危機前の水準を完全に取り戻したといえる。

 

米国の消費者は、より多くのクレジットカードを入手できるようになった結果、リボルビング残高(しばしば「クレジットカード残高」と称される)は年約5%のペースで増えていった。

 

https://i.gyazo.com/221fe5aaa209497f3faad3692f8319ea.png


そして御存知の通り、2008年5月ごろから、債務残高は長い谷底に向かうこととなるのだが、クレジット(信用)の観点から見れば、完全にそこから抜け出したことになる。

一部にはこの更新を警戒する声もみられるが、それは依然として少数派である。

 

その背景には、金融危機前の「異常」な状況と比べて、消費者債務の「質」が変わっているとの指摘がある。
以下のグラフは”Liberty Street Economics”からの引用である。

 

http://libertystreeteconomics.typepad.com/.a/6a01348793456c970c01bb099c1ae6970d-500wi

 

ご覧のように、債務残高こそ2度目のピークを迎えているが、Mortgage(住宅・不動産ローン)残高は戻りきっておらず、債務に占める割合としては低下している。

 

その代わりに増加しているのは、オート(自動車)・ローンとステューデント・ローン(学資ローン・貸与型奨学金など)だ。

 

このうち「自動車ローン」については、過去に「「今、アメリカ経済は好調です。車が飛ぶように売れていきます。理由は低所得者向けの低金利ローンです。」について」でも取り上げたが、こちらは延滞率で見ても今なお米国における低水準を保っているという。*1


また、ステューデント・ローンは米国消費者が抱えるその他の主要な債務に比べれば、返済期限や金利の面で優しいものとなっている。

 

とはいえ、日本での貸与型奨学金の事例と同様に、若年層はかつてよりもステューデント・ローンの重さに苦しんでいるとの報告もある。
先ほどの「住宅ローン残高」の減少は裏を返せば、若年層がその結果、ローンを借りられなくなっていることにも起因するとの見方も出来る。

 

そして、消費者信用残高はさらなるピークを更新し続ける見込みであることに変わりはない。
折しも日銀は、サブプライム危機直前の金融政策決定会合の議事録を公開している。

東京新聞:日銀、07年議事録を公表 米住宅問題の実態見抜けず:経済(TOKYO Web)

金融政策決定会合議事録 年別一覧 : 日本銀行 Bank of Japan

 

事前に危機を察知することが如何に難しいかは、直近の経験が教えてくれるわけだが、幸いにも現在では消費者信用に関するデータは当時以上に多く得られ、当時ほどにサブプライム・ローンの証券化商品が出回っているわけでもない。

少なくとも、この話題が大きく語られるような段階には未だ無いというのが大勢のようだ。

*1:詳しくは、”Liberty Street Economics”のエントリを参照。