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ああプレミアム商品券狂騒曲 売上増えたのに資金ショート相次ぐ

日本各地で「プレミアム商品券」が話題となっている。

この「商品券」は、商品券購入額の20~30%がプレミアム(上乗せ部分)として付されており、一般的には販売された市区町村等内でのみ使用可能となっている。
10,000円分買えば12,000円分のお買い物が出来るところが人気の最大の理由である。

ところで、ここで上乗せされた2~3割の部分というのは一体どこが負担しているのであろうか。

 
それは直接的には自治体であるが、根本的には昨年度の補正予算に盛り込まれた新型の交付金であり、つまり国民の負担である。
そのためか、朝日新聞の記事では「官製商品券」と見出しが付けられている記事がある。

したがって、基本的には国民間で、より消費を行う主体へ経済的価値を移転させる政策といっただろうか*1
その性質ゆえ、下に引用した図表に登場する主体は、基本的にはこの制度で損をしない立場にいることになる。

「商品券発行者」(地方自治体等)は、プレミアム商品券を発行することを条件に国から受け取った新型交付金を商品券のプレミアム部分だけでなく、金融機関が受け取ることになる換金手数料にも充当できる。
金融機関はただ商品券の回収業務を代行することでその換金手数料を受け取るに過ぎない。
「取扱事業者」(商店・商業施設、レジャー施設等)は「商品券購入者」(一般消費者)から受け取った商品券を金融機関に持ち込んで、「商品券発行者」が消費者から受け取ったお金と交付金の合計からなる財源から精算を受けるだけである。

 

 

図はまち・ひと・しごと創生本部事務局「プレミアム付き商品券参照資料」より

 
このため、基本的にこの制度になんとなく解せない気持ちになるのは、多く税金を納めている主体と、この商品券を買わない、または、その人気のために買うことが出来なかった人や、そもそも居住地域では発行されない人々である。


ところが、今回大分市では先ほどの図の中に、この制度がもとで困窮する主体が現れてしまったというのである。
それは「取扱事業者」(この場合は中小の商店など)にあたる。

上記の図では時間の概念が入ってこないので、日付等の情報とともに、何が起きたのかをこの図に書き入れてみたのが下の図である。
情報は「大分市の商品券で「困った」 緊急資金繰り対策へ - 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate」を参考にした。

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このように、商品券が販売された7月の月初から大量に中小規模の商店に持ち込まれた商品券は、現金に変わるのが月末最終日になるということになっていたのである。

この現金がショートしてしまう格好を表現するために、この中小商店の仕訳は(単純化しすぎた例ながら)以下のようになる。

http://i.gyazo.com/d46b77d4b5b98cf1056a20476835c7f6.png



左側のプレミアム商品券を受け入れる商店の例だと、商品券が換金されない間の仕入代金を含む経費の支払で現金の一時的な流出が経営を圧迫することなる。
つまり、「売れれば売れるほど経営危機」状態である。


このようにプレミアム商品券が起こした資金ショートで困り果てた事業者からの相談が市や商工会に相次いだことで、大分市ではなんとこの「プレミアム商品券難民」に対し、公庫や金融機関からの短期融資の審査迅速化を要請したのである。

「売上が増えたのに経営危機」の事例集に載せるにはちょうど良いのかもしれないが、商品券ブームのおかげで短期融資というのは当事者には笑えない笑い事となってしまった。
なお、先ほどの大分合同新聞の記事によれば、中小の事業者に限って商品券換金から現金化までのタイムラグを大幅に短くするという。

「プレミアム商品券狂騒曲」ともいうべき一連の騒動の中で今のところ最もてんやわんや度が高いこの事例。
見れば見るほど大分市特有の事例とは思えないのは私だけだろうか。

*1:もちろん地方選対策の一環であったのだが