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他社動向受けて減損? 伊藤忠・岡藤社長の正直すぎる発言に外部ざわつく

伊藤忠商事は6日、2016年3月期決算(連結)を発表。
当期では、資源価格の下落などを背景に、ライバルの大手商社がこぞって最終赤字に転落。その中で2403億円の税引き後利益を確保したとの発表内容を、同社の岡藤社長は「不戦勝」と称しました。

 2期ぶりの減益だが、大手商社では三菱商事と三井物産が税引き後赤字に転落する見通しで、伊藤忠は初の業界首位に立つことが確実となった。

 記者会見した岡藤正広社長は、「不戦勝で1人だけ土俵に上がっているようなもので寂しい。勝負は今期だ」と語った。

www.yomiuri.co.jp

 
上記の記事中でも「損失計上を決めたのは、3月下旬以降。三菱商事や三井物産が税引き後赤字になると発表し、商社首位が固まった段階での判断だったという」という、思わず我が目を疑う内容が非常に興味深いのだが、特に話題を呼んだのがBloomberg配信の記事であった。

  岡藤氏は「3月20日過ぎまでは当初の3300億円は秒読みだった」と明かした。ところがその後、三井物産や三菱商事が大規模な減損損失を計上するとして、ともに最終赤字に陥る見通しだと発表。「皆が試合を放棄する中で1人だけ気を吐いて汗をかいてゴールするのがいいのか、いろいろな意見があった」という。

  一方で「伊藤忠は今まで必ず予算を達成してきた」との思いもあった。出した答えは「今期以降を考え、あくまで数字よりは順位。そこで急きょ落とせるものは落とし、われわれは今期に勝負をかける」として懸案事項だった損失計上を前倒しで処理したという。

www.bloomberg.co.jp


岡藤社長によれば、「3月20日過ぎまでは当初の3300億円は秒読みだった」が、同業他社が大規模な減損損失を計上する姿を見て、「今期以降を考え、あくまで数字よりは順位。そこで急きょ落とせるものは落とし、われわれは今期(2017年3月期)に勝負をかける」として追加の減損処理を決めたのだといいます。

ここで、たとえば同社は6日に「当社単体決算におけるコロンビア石炭事業への投資に係る損失処理について[PDF]  」で、「石炭価格の下落に伴い Drummond International の公正価値が下落したことにより、ICA 社の 2015 年度第4四半期決算において株主資本が毀損」したことから、「2015 年度第4四半期において ICA 社に対する投資の毀損に係る特別損失(「関係会社等事業損失」)として、465 億円を計上」したと開示しています。

にもかかわらず、同業他社の状況を見た後で、「急きょ落とせるものは落とし」たという岡藤社長の発言は、減損会計を恣意的に経営者が利用していると捉えられかねないもの、と外部では受け止められています。これは残念すぎる発言といえそうです。

したがって、同社内部には、こうした社長の発言についてガッカリする方々も居るものと思われますが、あくまで個人的には、同社の経営者による自社の決算についての考え方が、このように「正直すぎる」発言で飛び出したことは、(ある意味で)投資家の判断に資するものであるとは思います。

これからも、伊藤忠社長の業績に対する「正直すぎる」ご発言、楽しみにしております。

ご参考

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 ※画像は同社「IR決算プレゼンテーション資料(PDF)」より