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SuicaやPASMOなどの利用履歴、今後の税務調査で準備を求める動き強まる

税務署による税務調査で、今後、SuicaやPASMOなどのいわゆる交通系のICカード・電子マネーについて、利用履歴の取得・提出を求める動きが強まっているという。複数の税理士がNot-So-Newsに明かした。
 

「次回の調査では残高履歴の用意を」と釘を刺されるケースもあったといい、これまで一切、関連する指摘を受けていない会社にも、今後の注意を呼びかけている。

 

今なおチャージの際の領収書で費用処理する会社も多い

交通系の電子マネーはかつて、そのほとんどが電車料金にしか使用されなかったことから、その他の電子マネーと異なり、チャージした時点でその金額を交通費として処理することが、実務上広く行われていた。

 

しかし近年、物品切手の購入費用とは異なり、交通系の電子マネーにおいては、会社の業務とは無関係である私的な消費に充てることが、より広範囲で可能となっている。
また、交通系のICカードは一部のクレジットカード併用型を除き、基本的に法人向けのものがないという性質上、役職員の私的な利用が比較的容易である。


こうした現金チャージによるICカードへの入金は、原則からすれば、入金時点では貯蔵品などとして計上し、実際に残高を利用するまで費用処理を繰り延べるべきものである一方、交通機関を利用しただけでは、領収書等が発行されないことも多い。

これに加え、経理事務の簡便化の観点もあり、チャージ(カードへの入金)をもって、入金額全体を交通費として費用処理を行う会社が意外に多いのだという。

ちりも積もれば税務リスク

しかしながら、その中に、役職員が私的に消費したものがあるのであれば、その金額が大きいほど、以下のような税務リスクが存在する。

(1)損金算入が認められない

税務調査において、これらの支出が経費として認められなくなると、所得が増加し、法人税が課される可能性がある。

(2)課税仕入れが認められない

同様に、消費税額の算定において課税仕入れに含めていた額が否認される可能性がある。

(3)役職員に対する給与等と認定される

個人による私的な利用と判断されると、たとえば役員への給与とみなされれば、源泉所得税の徴収漏れが指摘される恐れがある。


これらのリスクが万一、実現した場合には、延滞税や過少申告加算税なども課される可能性がある。

前述の税理士らによれば、たとえば役員に対する経費精算においては、ちりも積もれば年間で相応の金額を計上している会社もあるのだという。

証拠を求める動き強まる

一般に、交通系ICカードの入金可能額はさほど多くはなく、Suicaの場合は20,000円を上限としている。
とはいえ、チャージを繰り返すことで、年間の支出額はそれなりのものになり得る。

社長がICカードを過剰に利用しているケースや、その他の不正も相次いでいるようで、税務署も今後はチャージされた残高の利用実態について証拠資料の用意を求めているようだ。

適正に処理を行っている会社では、たとえばICカードを読み取ることが可能な経費精算システムを利用したり、従業員が券売機で各自取得できるICカードの利用履歴の印字などの提出を求める等の対応を取っている。

Suica での自動券売機等での履歴印字は、直近の利用分の最大50件まで(1日の利用が21回以上の場合等で一部印字できない場合がある)行われ、PASMO では、直近の利用分20件のみが表示・印字され、一部の鉄道事業者では最新100件までの表示・印字が可能という。

また、いずれの場合も印字は直近26週間以内の履歴に限り、Suica の場合は一度印字した履歴は再印字不可だが、PASMO の場合は再印字される。乗車ではなく、電子マネーとして買い物をした場合は「物販」などと表示されるという。

【Suica・PASMO履歴の確認方法】JR駅と私鉄駅で利用履歴印字の違いを比較した | スナライム


思わぬ「トリプル・パンチ」を喰らわないためにも、「これまで大丈夫だった処理」からの脱却を図るべき時かもしれないと、冒頭の税理士らは述べている。