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【統計学】「ポストP値時代」に向けた新たな教科書、6月2日に発売へ

基礎からのベイズ統計学: ハミルトニアンモンテカルロ法による実践的入門」でもおなじみ、豊田秀樹氏による「ベイズ的〈ポストp値時代〉の統計学」が今年の上半期中に発売される見通しであることが分かった。Amazonではすでに予約を開始している。


朝倉書店のコメントによると、この書籍は今年3月7日に、アメリカ統計学会(ASA)が「p値の誤解や誤用に対処する6つの原則に関する声明」を出したことを受け、「初歩の統計学入門でありながら、ベイズ流アプローチのみで記述される」という画期的なスタンスで書かれた「有意性検定やp値によらない統計学の教科書」とされる。

 
このASAの声明については、日本国内でも、「p < 0.05かどうかが全てを決める時代はもう終わらせよう」として取り上げたブログなどが大きな話題となっていた。

このドキュメントの中でアメリカ統計学会のpresidentであるJessica Utts教授も語っていますが、「p値偏重主義に対する決別を統計学者のコミュニティがその会長とboardの名において宣言する」のは恐らく史上初めてのことではないかと思われます。

tjo.hatenablog.com

 

まず、論文の査読者が統計的手法に十分詳しくない人間だと、何かが何かに効果が無いと言う事実を切々と説明しても、P値が有意ではないと言うことで公表できない。
何か無いと言うのも科学的に意味がある場合もあるのだが、それが引き出し効果(file-drawer effect)と言って死蔵されてしまう。これどころか、業績がないと研究職では立ち行かなくなるので、胡散臭い統計手法で有意性を捻り出してしまうケースもある(p-hacking)。これで再現性の無い研究が増えて困っているのが現状だ。
そもそも、データを入力すると計算機が計算してくれるためか、P値の意味さえ分かっていない研究者もいるぐらいだ。
つまり、かなり無批判に、P値を参照している。実際、それぞれの分野で習慣的に受け入れられているP値の有意水準が批判される事は、まず無い。

www.anlyznews.com

 
そのため本書は、「p値や有意性に拘り過ぎない」方法で、統計学の初歩の教科書を記述し直すという画期的なアプローチが注目される。


なお、前述のエントリ『「p値や有意性に拘り過ぎるな、p < 0.05かどうかが全てを決める時代はもう終わらせよう」というアメリカ統計学会の声明』でも、中盤で「ベイジアン的アプローチ」について触れる箇所があるが、本書ではこれについても微分・積分・シグマ記号・行列・ベクトル演算を使わずに取り上げていくとみられる。
(この点について、逆に物足りないと思う方に向けては、通称「みどりぼん」などが同エントリ内で紹介されている。)

本書の紹介においては、

著者は大学で統計学の授業を担当し,長らく有意性検定を講義してきました.学生はみな熱心でしたが,有意性検定は教えにくい単元でした.学生たちは有意性検定を習得しても,そして使い続けてさえいても,理論を誤解し,直ぐにその本来の意味は忘れてしまうようでした.有意性検定の理論体系は,その利用者に不自然な思考を強いるからです.また数学的に高度であり,文科系の学生には理解ではなく,暗記を強いるからです.


対して研究仮説が正しい確率を直接計算するベイズ流の推論は考え方がとても自然です.だから誤解が生じる余地がありません.また生成量を使った分析は汎用的で強力です.その点で本書はとてもユニークであり,長く統計分析に係わられてきた方が,統計学に再入門するときの独習書としても利用していただけます.

と語られており、SNS上では早くも、新時代の教科書として期待する声が挙がっている。

昔ながらの統計学の教科書では、例題を実践するにあたって手計算が煩雑になる傾向があったが、著者によれば「ベイズ流のアプローチが,MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ法)の発達によって必ずしも高度な数学を必要としなくなった」ことから、Web上に公開されるRとStanのコードを用いて、大学を卒業した読者にも気軽に本書を用いて「統計学に再入門」して欲しいとしている。
朝倉書店から6月2日発売、定価は2,808円。(Amazonでは予約受付中)

ご参考

「はじめての統計データ分析」 豊田秀樹のメモ - StatModeling Memorandum