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所得税ゼロ化相次ぐ海外親族「扶養しまくり控除」、来年からついに厳格対応へ

日本経済 税制・税務

お知らせ

このエントリについての実務上のポイントはこちらにまとめました。

nots.hatenablog.com

 

当初の予想より早く、ギリギリ昨年内にまとまった平成27年度税制大綱。


平成27年度 税制改正大綱 | 政策 | ニュース | 自由民主党

 

この中の主要な論点はいろいろな方がまとめているようなのでそちらにお任せしましょう。

 

というわけで、今回はほとんどの人にまったく関わりがないこちらの話題をあえて取り上げてみます。

 

日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等義務化

・非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際提示しなければならない。

[PDF]速報!平成 27 年度税制改正大綱:小谷野公認会計士事務所

 

 本件に向けては直近このような報道がありました。

親族を養う人の税負担を軽くする扶養控除。

この制度を海外の多数の親族に利用する納税者を会計検査院が調べると、約7割が所得税を納めていなかった。

国内の親族は続き柄や所得がないことなどを自治体で把握できるが、海外に住む親族については証明書類の提出義務はなく、届けを信じているのが現状だ。


海外に多数の扶養親族、7割が所得税ゼロ 会計検査院:朝日新聞デジタル

所得がかなりあっても、扶養親族が多いと所得控除ができて、支払う/源泉徴収される所得税を非常に少なく、あるいはこの「海外の多数の親族に利用する納税者のうち約7割」のようにゼロに出来るんですね。

しかも、その「約7割」の中には非実在扶養親族ともいうべき方を扶養控除等申告書に記載される方や、そもそも現地で自力でしっかり生活されてるんじゃないでしょうか案件がかなりあったようですね。

 

それもそのはず、記事では「届けを信じているのが現状」といいますが、

 

 外国人の場合は、母国にいる両親や親戚に送金をするなどして実際に養っているのであれば、出生証明書や婚姻証明書などで親族であることを証明すれば扶養控除が認められます。しかし実務上は下記の例のように扶養控除の対象にしていいかどうか判断に迷う場面が多々あります。
(例)
・友人・知人・親族等が帰国する都度現金で持ち帰っているため送金明細がない場合(国税庁は別居親族を扶養にする場合は送金の事実を示すよう求めていますが法令では定められていませんhttp://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm#q3 )
・送金額が少なすぎる場合(国によって物価は違うのでいくら送金すれば扶養していると言い切れるのか判断基準がない)
・父母・兄弟・甥・姪、多数の者を扶養していると申請してくる場合(本当に扶養しているのか客観的な判断基準が示せない)
・被扶養者が母国において本当に所得がないのかどうか判断することが非常に難しい

愛知県名古屋市中区の橋本税理士事務所/相続相談プラザ: 扶養控除と外国人問題*1

「法令では定められていない」だったんですね。

さすがに「公平でない」という会計検査院の指摘もあり、いよいよ平成27年度税制大綱にその対策が盛り込まれることとなりました。

内容をみますと、かなり強化されたなというのが率直なところです。該当箇所を引用してみます。

(2)日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類の添付等義務化

① 確定申告において、非居住者である親族に係る扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金関係書類を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際提示しなければならないこととする。ただし、下記②又は③により提出し、又は提示したこれらの書類については、添付又は提示を要しないこととする。

ちなみに②とは源泉徴収において扶養控除等を受ける場合、③とは年末調整において扶養控除等を受ける場合をいいますが、それらの場合には添付を免除されるということではなく、基本的には確定申告をしないことが出来ますので、そうした場合には親族関係書類や送金関係書類を(年末調整を受けるときなどには源泉徴収する法人等に提出する必要がありますので)税務署に提出する必要はないですよねということです。

そうなってくると、今度は「親族関係書類」や「送金関係書類」とは具体的に何なのかというのが気になるところですね。

 

親族関係書類

(注1)上記の「親族関係書類」とは、次の①又は②のいずれかの書類をいう。
① 戸籍の附票の写しその他国又は地方公共団体が発行した書類でその非居住者がその居住者の親族であることを証するもの及びその親族の旅券の写し
外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類で、その非居住者がその居住者の親族であることを証するもの(その親族の氏名、住所及び生年月日の記載があるものに限る。)

これはかなり厳格ですね…。

送金関係書類

(注2)上記の「送金関係書類」とは、その年における次の①又は②の書類で、その非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるためのその居住者からの支払が、必要の都度、行われたことを明らかにするものをいう。
金融機関が行う為替取引によりその居住者からその親族へ向けた支払が行われたことを明らかにする書類
② いわゆるクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその親族が商品等を購入したこと及びその商品等の購入代金に相当する額をその居住者から受領したことを明らかにする書類

 これも相応に厳格ですね。

 

しかしながら、大綱の文章をよくよくみますと、先ほどの①の確定申告の場合、「確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際提示しなければならない」に対応するように②源泉徴収において扶養控除等を受ける場合、③年末調整において扶養控除等を受ける場合は「書類を提出し、又は提示しなければならないこととする」となっております。

公的年金等の源泉徴収の場合を除くと、ほとんどこれらの書類の提出または提示を受けるのは申告者の勤め先の企業となるはずですよね。

書類の提出ではなく、「提示」を行った場合は事後的に第三者*2が確認することは出来ないわけですが、これは起案者である自民党さんの想定通りなのでしょうか。

 

また、現場や運用面では以下のような点も気になります。

  • いくら送金すればOKなのか*3。それとも、送金していればとりあえずはOKなのか。
  • これにかかる改正により、過去の不正が発覚した場合に、国税や地方公共団体は過年度分の徴収も求めていくのか、また、その場合はその本税への延滞税等の類は課されるのか。

これらのものについては、「④ その他所要の措置を講ずる。」となっておりますので、これから詰めの作業になりますが、この一連の改正は居酒屋チェーンの担当者など対応に苦しむことになるかもしれませんね。

その他にも、マイナンバーが控えており、それと合わせて早めにアナウンスして対応していくことが求められるんでしょうけど、現場の苦労はお察しいたします。

 

以上、課税の公平のための措置となりますが、本件は「平成 28年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに平成28年分以後の所得税について適用する。」という取り扱いとなっております。

*1:強調は筆者

*2:ほとんどが調査で立ち入る税務署ですけど

*3:中盤の引用にもあるように、そもそも物価水準が各国で違うので、日本円でみて少額でも現地では相応の生活が可能である場合も考えられる。