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年末調整にかかる事務は税理士業務 「社労士はNG」と協議で決着

社会保険労務士が年末調整事務を行うことは、税理士法第52条(税理士業務の制限)に抵触する――。

今年、全国社会保険労務士会連合会(社労士連)と日本税理士会連合会(税理士会)が4度の協議を行い、年末調整業務に関する業際認識について、「年末調整において税務判断を必要とする事務は税理士業務」であると再確認するに至ったという。両者はこれを文書に取りまとめた。


社労士の中にはこれまで、年末調整事務を行う者が少なくなかったが、社労士連が昨年、年末調整事務について、「社労士が行うことのできる業務」であると文書化したことから、これを税理士会側が問題視。

日税連が「月刊社労士」掲載記事で社労士会連合会に申入れ - 日替り税ニュース


その後、両者の間で協議がなされた結果、社労士連が発行する「月刊社労士」の平成28年10月号では、「年末調整において税務判断を必要とする事務は税理士業務」と再確認されたとの内容が取り上げられており、会員への周知が行われる結果となった。

 
昨年、全国社会保険労務士会連合会が発行する「月刊社労士」(平成27年5月号)において、「賃金計算事務の延長線上にある年末調整事務についても、法定調書の作成及び税務署への届出を除いて、社労士(法人)が行うことのできる業務です。」と記載があったことが今回の一連の発端。

税理士会側は「社会保険労務士が当該業務を行うことは、税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する」と平成14年6月6日付文書にて両者間で確認していたことと内容が異なるとして、社労士連へ申し入れを行った。

その後は両者間で4度の協議が開かれた結果、「年末調整において税務判断を必要とする事務は税理士業務」であることを再確認し、その内容を双方の会員に周知するとして平成28年9月13日付で文書に取りまとめたことで、一連の騒動は終結した。


なお、今回の業際問題の再燃においては、税理士会側が国税庁に、当該業務における法解釈について見解を確認したところ、国税庁からは「所得税法第190条に基づく年末調整計算は、租税確定手続であり、税理士業務の対象となる事務に該当することから税理士以外の者である社会保険労務士が当該業務を行うことは、税理士業務についての業務制限を定めた税理士法第52条に抵触することになる」との回答を得ていたという。

税理士でない者が法第52条の規定に違反すると、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる場合があるが、現実的にはひとまず、両会にて双方の業務を侵害しないよう周知をしていくことで1年近くにも及んだ問題は落ち着きを見せることになった。

 

両会は今後も定期的に、双方の職域を尊重し合う関係を構築するため、定期的に協議の場を持つこととしている。