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#適時開示アワード 2022 最終結果を発表

投票ありがとうございました

「適時開示アワード 2022」への投票まことにありがとうございました。

終結果を以下の通り発表いたします。

 

最終結果は公式サイトに掲載しました。

discloawards.com

 

適時開示アワード 2022 大賞は、グレイステクノロジー「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」

 

 「適時開示アワード」実行委員会は、今年「最も人々の記憶に残った適時開示情報」に、グレイステクノロジー(6541)「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を選定しました。

 「適時開示アワード」はことし開示されたすべての適時開示情報等の中から、不特定多数による投票により「最も人々の記憶に残った適時開示情報等」を選定する、今年度で10度目の開催となるイベントです。

 

 最多票を獲得したグレイステクノロジー「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」は、過年度財務諸表において売上計上していた取引に不適切な取引が含まれている旨の指摘を外部機関から受けたために設置された特別調査委員会の調査報告書です。

 「株式上場という経済活動が人を、組織を狂わせていくさまを描いた作品」と評価され、選者からは、「これのせいで監査手続が増える」などと、真っ当に経理を進める企業からの恨み節も聞かれました。

 

 次点はユニバーサルエンターテインメント(6425)「TRLEI にて発生した不法占拠等の違法行為に関するお知らせ」でした。こちらは昭和平成を駆け抜けた異色の日本人カジノ経営者が会社を追われた後に、ユニバ社が経営していたフィリピンのカジノに武力を用いて突入した事件を報告する、とても令和とは思えない衝撃的な適時開示情報です。

報告書を読んだ選者からは、「私兵による占拠から奪還という、ハリウッド作品並みのスケールの大きさは「市場のドラマ」の一言では語り尽くせない大スペクタクル、今年一番の事件間違いなし」とのコメントが寄せられました。

 

 今年の「適時開示アワード」は2022年1月から2022年12月に開示された適時開示情報を対象とし、第1フェーズで10社の適時開示を公募により選定。最終投票の結果、グレイステクノロジー「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を大賞に選定しました。

 

 以下では、今年のトップ5に選ばれた作品を、投票者によるコメントとともにご紹介して参ります。また、ノミネートされた全作品につきましては、次のリンクをご参照ください。

nots.hatenablog.com

 

トップ5の選評

適時開示アワード 2022 最終結

大賞:6541 グレイステクノロジー 特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ

エントリーNo. 6

銘柄コード:6541グレイステクノロジー

[PDF]特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ

 

「中小企業」が無理やり上場してみた

既に上場廃止となった会社だが、その契機となった架空売上の計上等を調査した報告書。
2021年に創業者が鬼籍に入った頃には業績が落ちはじめ、遂には粉飾が発覚した。


蓋を開けてみれば上場前から売上は前倒し計上されており、その回収も追いつかず、結果的には会長以下経営陣が売上の架空計上をフルバックアップ。発覚直前期の架空売上の割合は50%を超えており、「成長企業」と評価されていた姿は完全に幻であった。

機関投資家に対する自らのコミットメント、成長をこだわるあまりの行き過ぎた目標設定や、現場への強すぎるプレッシャーで「成長企業としての虚栄」を維持しようとするあまり、伝説のシニアコミュ事件よろしく売掛金の残高確認状はきっちり取引先から回収。

さらにこれら架空売掛金の回収には役職員が上場で得ていた株式売却益(個人マネー)をその原資とするなど、およそ上場企業とは思えない自転車操業を行っていた。(なお、当該入金額は各自が退職時に会長から和解金名目で返還されるというこちらも酷い有様。)


報告書には名ゼリフも多く入っており、虚栄を維持するための現場への恫喝めいた経営陣からのプレッシャー、企業の成長を見せかけるための創業者の苦悩なども克明に記録され、ただの不正に関する報告書のみならず、創業者をはじめとして経営陣が狂っていく過程も読み取ることができる。

 

何か外面ばっかりこう作ってしまってきてるな。大企業なんですかね(笑)。中小企業としてやってた、つまり上場する前にやってたいい部分も、全然とんと見えないです。

もう本当に冗談抜きで寝ても覚めても俺上場してからさあ、数字のことばっかり。もう上がるまでこんなに数字ごりごりごりごり考えたり、追いかけたりってなかったわ。めちゃくちゃしんどい。

 

無理な上場とは、かくも人も組織も狂わせるのか。

 

選者コメント

「創業者を筆頭に追い詰められ狂っていく経営陣、拙いガバナンス。台詞も多く何処か人情噺さも感じる」(空き缶 さん)

「これのせいで監査手続が増えるから。」(匿名さん)

 

2位:6425 ユニバーサルエンターテインメント TRLEI にて発生した不法占拠等の違法行為に関するお知らせ

エントリーNo. 5

銘柄コード:6425 ユニバーサルエンターテインメント

[PDF]TRLEI にて発生した不法占拠等の違法行為に関するお知らせ

 

追い出された創業者が武力で「不法占拠」

ラニャケ市警の警官及び私設警備員約 50 人などを引き連れて、不法に TIGER RESORT LEISURE AND ENTERTAINMENT INC. の役職員数名を強制的に施設内から退去させ、主要な従業員を何の権限もなく不当に解雇するという暴挙を働きました。


2017年6月29日当時、当社の会長であった創業者が、「株主総会の秩序を乱す可能性が高いと判断」され、株主総会への入場を拒否されて取締役から解任。
この「ワンマン創業者」の退場から5年、日本人の名を唯一冠するカジノ「オカダ・マニラ」にその彼が戻ってきた。


--経営権の奪還ではなく、武力による「不法占拠」として。


当社によると今年5月末に、この創業者は冒頭の通り当社所有施設を不法占拠。
各部門の主要従業員や、創業者側の指示に従わない従業員を不当に解雇し、施設の運営基盤を奪取した。

当社が「重大な犯罪行為」と糾弾した、現地の警官まで投入されたこれらの行為に対し、当社は正攻法でフィリピンカジノ運営公社と正当な国家警察の支援を受けて管理権を「奪還」。
10月には占拠時の強要の疑いで創業者が逮捕される事態にまで至ったが、その後保釈されており、一部ではこのカジノ経営権闘争はまだまだ続くのではないかとの見方もある。

「あの時代の日本人カジノ経営者」という異例の経歴から生まれるバイオレンスを、今後も現経営陣は正攻法で鎮めることは出来るのか。

 

選者コメント

「私兵による占拠から奪還という、ハリウッド作品並みのスケールの大きさは「市場のドラマ」の一言では語り尽くせない大スペクタクル、今年一番の事件間違いなし。」(ECONOPUNK さん)

「ヤクザ映画顔負けのバイオレンスの一端を適時開示で垣間見る味わい深さが、全体的に不作だった今年のなかで一際輝いていた」(えび さん)

 

3位:6035 アイ・アールジャパンホールディングス 第三者委員会設置に関するお知らせ(ダイヤモンド・オンラインの報道を受けた当社元役員に関する追加調査の実施について)

エントリーNo. 3

銘柄コード:6035 アイ・アールジャパンホールディングス

[PDF]三者委員会設置に関するお知らせ(ダイヤモンド・オンラインの報道を受けた当社元役員に関する追加調査の実施について)

火のないところに火をつける

昨年、突如アジア開発キャピタルからのプロキシーファイトに追い込まれた新聞輪転機メーカー「東京機械」。その事業の性質から大手メディアを巻き込む大激戦へと発展した。

当初はかなり厳しい戦いが予想されたが、敏腕MA弁護士ら最強の布陣が大手議決権行使助言会社の支持を取り付けることにも成功し、臨時株主総会にて買収防衛策を無事可決。防衛を果たした。


この「最強の布陣」側で東京機械の防衛側にいたアドバイザーがIRジャパンだったが、それから一息ついた今年6月、同社顧問にスライドする予定だった副社長が突然「一身上の都合」で辞任した。


3日後にはその答え合わせをするかのように、証券取引等監視委員会がインサイダー容疑でこの元副社長の関係先を強制調査していることが報じられた。


その後に設けられた調査委員会の調査において、当時の社長は過去に自分が招聘していたこの副社長の管理が不十分であったとして任命責任を感じており、辞任までのラスト1年間は特に副社長が社内で野放し状況にあったことが分かっている。


そこからさらに半年後、開示タイトルにもある通り、ダイヤモンド・オンラインは前述の東京機械vsアジア開発キャピタルプロキシーファイトにおいて、アジア開発キャピタルに東京機械株の買収提案を行っていたのが、まさかのその副社長であるとの衝撃的な報道が飛び出した。

当該報道の真否については現在、IRジャパンも第三者委員会を設けて調査を行っているが、副社長の当時の予定を確認したところ、報道された時期において実際にアジア開発キャピタル接触していた可能性があることが判明しており、当社の行動のまさかのマッチポンプぶりが「市場の死の商人」すぎると話題となった。

 

選者コメント

「受注ではなく「創注」とは、バブルのころに言われていたような気がします。」(栗 さん)

「まさかの案件組成能力発揮。巻き込まれた東京機械には同情する。」(kakaik2 さん)

 

4位:7816 スノーピーク 代表取締役社長執行役員山井梨沙の辞任と代表取締役社長執行役員の交代について

エントリーNo. 8

銘柄コード:7816 スノーピーク

[PDF]代表取締役社長執行役員山井梨沙の辞任と代表取締役社長執行役員の交代について

突然のスキャンダルに「アンチ」が歓喜

「人生に、野遊びを」をスローガンに、「スノーピーカー」と呼ばれる熱狂的なファンを擁するアウトドアブランドを展開する当社。
当社はファンとのコミュニティづくりを重視し、ファンの購買意欲を途切れさせない仕組みを確立し、その強大な地位を独自に築いてきた。

しかし、熱狂的なユーザーコミュニティというのは、近接する他メーカーのユーザーからヘイトを買いやすいものであり、ネット上にも多くのアンチ・スノーピークが少なからずいるとされる。


そんな中に今年降って湧いたのが、この開示にある突然のスキャンダルによる創業3代目の社長執行役員の辞任騒動。
本人から「既婚男性との交際及び妊娠を理由として、当社及びグループ会社の取締役の職務を辞任したいとの申し出があった」とのことで、会長執行役員である父が一部役員報酬を減額。彼が社長執行役員職を兼務することとなった。


デザイナー出身のキャリアをここまで順調に歩んできた彼女のスキャンダラスな電撃辞任劇には衝撃も大きく、大手メディアも大きく報道。


このニュースは「アンチ」にとって、当社を叩く格好の材料と思われたのか、たちまち大炎上することとなり、当社もこの動きに対して9月には「誹謗中傷等に対する法的措置について」というリリースを開示して過度な誹謗中傷は許さない姿勢を示した。

 

選者コメント

「上場企業の女性社長が不倫の果ての愛の逃避行を選んだところに人間味を感じる」(えび さん)

スノーピークは社長とはいえ個人的な事情をどこまで開示するのか、考えさせられたため、最も印象に残りました。」(@i1973 さん)

 

5位:3808 オウケイウェイヴ 株主による臨時株主総会招集請求に関するお知らせ

エントリーNo. 1

銘柄コード:3808 オウケイウェイヴ

[PDF]株主による臨時株主総会招集請求に関するお知らせ

悪びれず食い物にされ続けた老舗Q&Aサイト

日本のインターネット関連産業について、その黎明期からご存じの人からすれば知らないはずはない老舗Q&Aサイト「OK WAVE」。

当社は2020年、MSCBによって調達した資金を活用して、暗号資産交換業者「LastRoots」を取得し、「フィンテック事業」に乗り出すも多額の赤字を計上。
これが重しとなって財務を圧迫し続けていた。

当該事業の継続を断念する一方で、株価下落に伴うMSCBの償還リスクも当然に顕在化することとなり、当社虎の子の事業でもあるソリューション事業を手放すこととなった。


そうして食い扶持を削ってまで得た資金は目先の投資収益欲しさに、Raging Bull合同会社(以下、R社)という得体の知れない自称投資業者に注ぎ込まれた。

R 社は大手ネット証券からIPOの特別枠を割り当てられたので、R 社に運用を委託すれば確定的な収益が得られるとして投資の勧誘を行っていた。

オウケイウェイヴ法務部はR 社について、「金融庁への登録又は届出が必要だが、何らの登録及び届出もなされていない」「契約締結前書面の交付もない」などといった当然の不審点を指摘し、取締役への投資中止の申し入れを行っていたが、当時のN 取締役はこれらの指摘に「ここで契約締結できなった場合の損失について責任が取れるのか」と返答。
当社取締役会はR 社への巨額投資へと突き進んだ。


もちろんその結果は法務部の懸念通りとなり、R 社の投資運用が架空のポンジスキームであったことをR 社自身が認めて破綻
一部の配当金以外の投資元本など、当社の純資産額の7割超がパーとなった。

当初は「投資の失敗は自身が責任を取る」と説明していた社内取締役もいたが、外部から招聘されていたH 社外取締役が「一身上の都合」で辞任した以外の動きはさらさら無く、しびれを切らした大株主が経営陣刷新を求めて臨時株主総会の開催を請求。
無事に開催されることとなった。


当社取締役会はこうした取締役らの責任を問う動きに対して、当社が資金繰りに窮して「危急存亡の秋」にあり、当該取締役らが「様々な対応の最中」であるのに解任するのは不適当であるとの謎の言い訳を行って、経営陣刷新の議案に反対意見を表明。
その言い訳のクセに議決権行使者に対してクオカードを配って議決権行使を呼びかけるなど無茶苦茶な抵抗を試みたが、臨時株主総会の結果、無事に経営陣が交代することとなった。

なお、追い出された経営陣の主要人物らは引き続き、この臨時株主総会の決議が無効であるとの主張をして抵抗している。

 

選者コメント

「法務担当への「ここで契約締結できなった場合の損失について責任が取れるのか」が秀逸です。」(栗 さん)

「経営陣があまりにも見苦しかったから。」(名古屋の長期投資家(なごちょう) さん)