ソフトバンクさん、人工知能のIQが1万だとか吹聴するのもうちょっとどうにかなりませんか
ソフトバンクが今後、孫正義流プレゼンテーションのノウハウを外部企業に販売するという。
同社では、かねてより社内研修の内製化を図っており、その一環で孫正義流プレゼンの研修を担当していた社内講師が、今後は売上目標も設定されて外部の企業に派遣される。
孫正義流プレゼン、外販へ ソフトバンク、シンプルな説明に大きな文字(1/2ページ) - 産経ニュース
記事では「孫社長のプレゼンは、こうした専門用語の意味を知らない人にも理解してもらえるよう、知識レベルの差を問わないシンプルな説明▽見やすい大きなグラフ▽文字-が特徴」と表現されているが、機械学習について勉強している私の仲間からすると、「勘弁してくれ」という思いがどうしても募る。
その理由は彼らが作った以下のパワポ*1を見れば一目瞭然だ。
題材は冒頭の記事でも取り上げられた、孫正義流プレゼンお得意の「シンギュラリティ」解説。
このIQが人工知能()にかかると…
なんだこれは(怒)。
しかもこの謎すぎる10,000という数値の出所は、孫正義流「私なりの推測」なのだという。
そもそもIQ(知能指数)の値の決まり方には様々な定義があるが、ウェクスラー式の成人知能検査では、平均値が 100で、標準偏差は15だという。
もしもその定義によるのであれば、IQ 10,000とは平均値+660 σに相当する。
そんなものの測定は困難だろうし、測定されたとしても、その値に「知能」指数としての意味はないのではないか。
もちろん、こんなことをイチイチ言っていると、「何をそんなにバカ真面目に捉えてるんだ」「そんなことくらいで腹を立てていれば商売なんて出来ないだろう」と笑われるのが一般的には自然な反応なのだろう。*2
だが、そのような反応は、後々めぐりめぐって業界を殺すことに繋がる。
人工知能研究の歴史は、研究の盛り上がりと、そこから業界の過剰な”人工知能”煽りがもたらしたブームの縮小の繰り返しで形成されており、過去2度の「冬」が訪れているという(甘利俊一「脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす」など)。
それからすれば今回は「第3次ブーム」である。
こうした煽りを推進しているのは何も彼らだけじゃなく、Watsonのような売り込み方だって辟易してしまうわけだが、このような「孫正義流」煽りメソッドが今まで以上に外部に広まるのかと思うと、暗い気持ちになってしまう。
彼みたいに売上を作ってくれるのであれば、まだ会社としては救いもあるのだが、そんな煽りプレゼンノウハウ先行で上司に学ばせてみろ。現場としては地獄だぜ。
もしも本当に、彼が言うような表現(想定)で、人工知能が人智を超えてくれるならば、こんな孫流プレゼンも効力を失ってくれるのかなあと夢想してしまうのだった。