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海外の親族を扶養控除等の対象とするのが面倒になります

年末調整・確定申告関連の検索流入が多い時期となりました。

以下のリンクへの流入も多いため、今回は国外に扶養控除または配偶者(特別)控除の対象としたい親族(以下、国外居住親族という)がいる方が「扶養控除等申告書」を提出する場面、また、その提出を受ける場面に遭遇してしまったとき向けのエントリを書いてみました。

nots.hatenablog.com

 

なお、これら国外居住親族が絡む場合に、なぜこれから面倒なことになってしまったのかは上のエントリをご覧ください。

いつから、どの程度面倒になってしまったのかは以下に述べます。

 

1-1:国外居住親族を扶養控除の対象として、確定申告を行う場合

どう変わる

・①親族関係書類と②送金関係書類を確定申告書に添付する必要があります。(書類を手元に持っておきたい場合は、申告書提出の際に提示するだけでも構いません。)

具体的な①親族関係書類と②送金関係書類については、次の「1-2」を参照ください。

いつから変わる

ただし、制度改正が行われるは平成28年度以降の所得についてとなりますので、平成29年3月15日までに行う確定申告までは、これまでと変わりません。つまり、今年はあわてて何かをする必要はないと言えるでしょう。

1-2:国外居住親族を扶養控除等の対象として、会社から年末調整を受けたい場合

どう変わる

・給与等の源泉徴収において、その適用を受ける旨を扶養控除等申告書等に記載した上で、その申告書等に①親族関係書類を添付して会社(源泉徴収義務者)に提出する(書類①は提示のみでも可)
・さらに、給与等の年末調整において、②送金関係書類を扶養控除等申告書等に添付する(提示のみでも可)

(参考)扶養控除等申告書の書き方(変更点のみ)

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いつから変わる

多くの会社では、平成27年に受ける年末調整のタイミングで「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を従業員に依頼すると思われますので、そのときに①親族関係書類の提出(提示)が必要と思われます。*1

その上で、国外居住親族を扶養控除等の対象とした上で平成28年分の年末調整を会社にやってもらいたい場合は、②送金関係書類を会社に提出(提示)する。
したがって、平成28年中に①親族関係書類と②送金関係書類を用意できない場合には、国外居住親族分を控除から外した源泉所得税額で年末調整されてしまう(その分、手取りが少なくなる)。

①親族関係書類 とは

以下のように取得が特に面倒な、「国外居住親族がその納税者の親族であることを証する」書類です。

・戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及びその国外居住親族の旅券の写し
・外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(その国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)

しかも、外国語で作成されている場合にはその翻訳文も必要とされています。

②送金関係書類 とは

国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払いを、必要の都度、各人に行ったことを明らかにする書類で、ちゃんと親族に送金していれば、その事実を証明する書類を用意できればよいだけです。

・金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引によりその納税者からその国外居住親族に支払いをしたことを明らかにする書類
・クレジットカード発行会社の書類又はその写しで、そのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその国外居住親族が商品等を購入したこと等及びその商品等の購入等の代金に相当する額をその納税者から受領したことを明らかにする書類)

こちらも、外国語で作成されている場合にはその翻訳文も必要とされています。

2.国外居住親族を扶養控除等の対象としたい従業員がいる会社の処理

基本的には、上記「1-2」をご覧いただき、その会社側の対応を行うこととなります。

どういったリスクがあるのか
・会社負担の発生
今回のお話の対象は当然、従業員らの所得税についてのものですが、会社は従業員へ支払う給与にかかる所得税の源泉徴収義務者となっております。
したがって、従業員から徴収する金額を計算(あるいは、年末調整を)するにあたって、その国外居住親族を扶養控除等の対象とする要件を満たしていない状況で、その親族を扶養控除等の対象者の人数に加えて計算・納税等を行ってしまうことも考えられますし、適切にやっていたつもりでも税務署から否認されることも有り得そうです。

その場合は、本来従業員の代わりに納めるべきであった適正金額と、誤って扶養控除等に含めすぎて計算していた金額との差額を、まずは源泉徴収義務者である会社が負担しなければならないこととなってしまいます。(もちろん、本来はその従業員が負担すべき所得税ですので、可能であればその従業員から改めて差額を徴収することとなります。*2

また当然ながら、その差額のみならず、不納付加算税や延滞税が課せられる場合には、それらの金額は会社負担となりますし、国外居住親族を有する従業員の数が多い企業や、重加算税が課されてしまうケースなどの場合には、会社負担も大きくなってしまうことがあるでしょう。

・従業員が持参した①②書類の「提示」で済ませてしまう場合

上記「1-2」で掲げた書類は会社へ提出するだけではなく、「提示」するだけというのも認められています。
この場合、会社に証拠は残りませんし、そのときの担当者も1年経たないうちにその内容なんて忘れているでしょうし、そもそも辞められてしまっているかもしれません。


この場合のほか、国外居住親族への送金額が日本の物価水準では「常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている*3」とは言えないレベルである場合などに、具体的に税務署がどう対応するかなど、事前に分からないことはありますが、大きな問題を引き起こさないように出来ることは、あらかたやっておくべきと思います。

ご参考

www.nta.go.jp

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*1:それがない場合、平成28年の最初の給与から天引きされる源泉所得税が、国外居住親族分を控除から外した額で計算される(その分、手取りが少なくなる)のが基本ルールとなります。

*2:小さな企業や人の出入りの多い企業だと、会社がカブって終わりということも多いようですね。

*3:所得税基本通達 2-47:https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/01/07.htm#a-05