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仮想通貨を「貨幣」認定へ? どうなるビットコインと税金

日本経済新聞は24日、『仮想通貨を「貨幣」認定 金融庁、法改正で決済手段に』と報じた。同日午前の段階では、上場しているビットコイン関連銘柄の株価にもポジティブな反応がみられている。

 金融庁が国内で初めて導入する仮想通貨の法規制案が23日わかった。今までは仮想通貨を単なる「モノ」と見なしたが、法改正で「貨幣の機能」を持つと認定することで、決済手段や法定通貨との交換に使えると正式に位置づける。

www.nikkei.com

 

記事によると、金融庁が今国会に提出を目指しているとされるのは「資金決済法の改正案」。したがって、その最大の目的は、いわゆるビットコイン取引所などを登録制にし、金融庁の監督下に置くこととみられる。

 

記事本文では『仮想通貨を単なる「モノ」と見なしたが、法改正で「貨幣の機能」を持つと認定することで、決済手段や法定通貨との交換に使えると正式に位置づける』とあるが、この記事のみから判断すると、今回の法改正が実現しても、記事の見出しにある『「貨幣」認定』とまで呼べる状況にはまだ至らないと思われる。

 

そのため、この記事についた「はてなブックマーク」コメントでは課税に関する指摘がなされていたが、その点に関して論じるのは時期尚早ではないかと考える。

とはいえ、「貨幣」認定への論点としては一歩進んだとも考えられるのではないかということもあり、ここでその論点整理を一度しておきたいと思う。

 

ビットコインと税務に関する論点を整理したものに、大阪国税不服審判所次席国税審判官の土屋雅一氏による、その名もズバリの論文「ビットコインと税務」がある。

[PDF]「ビットコインと税務
https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/journal/saisin/260430_tsuchiya.pdf

 

この論文は、ビットコインがいわゆる通貨として認定されていない状況での課税上の取り扱いについて論じたものであり、以下では個人的にそこで掲げられていた課税上の論点を表にまとめている(「上記論文上の整理」列に記載)。

また、今回の改正案では関係しないものの、今後、外国為替及び外国貿易管理法に規定される外為法上の支払手段にビットコインが掲げられるなど、ビットコインの「貨幣」化に進展がみられた場合の取り扱いの予想(当ブログによる)を右列に記載した。

 

 上記論文上の整理「通貨」とみなされる場合
所得税法 ・営利を目的とした継続的なビットコインの取引から生じた利益
→事業所得又は雑所得(棚卸資産としてのビットコインの会計処理に従う)
※ただし、ビットコインを支払手段として用いた場合には、取引時のビットコインの市場価格とビットコインの簿価との差額を損益として処理する方法を通達で定めることが考えられる

・投資目的としてビットコインを保有する場合の売却益
→譲渡所得
※ビットコインが(著作権に保護された著作物や電磁的記録と認められる場合等のように、行政官庁の許可・認可・割当て等により発生した)事実上の権利に当たらない場合には、この売却益は譲渡所得ではなく雑所得

・一般の消費者が財やサービスを購入する際の支払手段として、ビットコインを使用した場合
→雑所得又は譲渡所得(財やサービスを購入した時のビットコインの市場価格とこのビットコインの購入した時の価格の差額)
※ただし、すべての個人のビットコインの取引状況を把握できるようなシステムがない限り、執行は困難
・通常の外貨建取引と同様に処理され、一般的な支払手段として用いた場合も外貨で財・サービスを購入した場合と変わらないと予想される(投資目的として保有した場合の売却益は譲渡所得)
法人税法 ・ビットコインに係る企業会計の基準が定まれば、この基準に従って法人の課税所得が計算されると考えられる

※しかし、ビットコインを取引の際の支払手段として使用した場合や配当の支払手段としてビットコインを使用した場合の会計処理などについては、ビットコインを支払時の市場価格に換算する方法などについて、通達により取扱いを定める必要
※ビットコインが「トレーディング目的で保有する棚卸資産」に当たる場合には、法人税法上は「短期売買商品」に当たる可能性があり、この会計処理についても通達により取扱いを定める必要
・通常の外貨建取引・トレーディング目的で行った取引に係る売買損益と同様に処理されると予想される
消費税法 ①国内取引の場合
・ビットコインが消費税法上の無形資産に当たれば、その譲渡は消費税の課税対象

②国外取引の場合
■輸入取引
・著作権等の無体財産権の外国からの導入は、保税地域からの外国貨物の引取りに当たらないため、課税対象外

■輸出取引
・ビットコインが著作権により保護された著作物に当たる場合には、ビットコインの非居住者への譲渡は、輸出免税の対象
・ビットコインが単なる電磁的記録で、かつ、消費税法上の無形資産に当たる場合には、非居住者に対してビットコインを譲渡したとしても、この取引を輸出免税とすべき規定は存在しない

③代物弁済
・ビットコインを取引の際の支払手段として使用した場合には、この取引を消費税法の規定による代物弁済として取り扱うことにより消費税の課税の対象となると考えられる
※代物弁済は目的物の引渡しを必要とする要物契約であることから、ビットコインが民法上の「物」である必要があり、なお検討が必要
・外貨との交換そのものには消費税は課税されないと予想される
相続税法 ・ビットコインが著作権により保護された著作物に当たる場合には、相続財産たる著作権として相続税の課税対象
・ビットコインが単なる電磁的記録であるとする場合には、これを経済的価値に対する支配権として扱えるかどうかが検討課題
※贈与税にはみなし贈与財産の規定があり、ビットコインが民法上の贈与財産に当たらないとされた場合であっても、対価を支払わずに利益を受けたと認定できる場合は、みなし贈与財産として贈与税の課税対象

・外貨を相続・贈与した場合と処理は変わらないものと予想される

※ただし、ビットコインの保管先がデスクトップウォレットやオンラインウォレットであり、秘密鍵が保存されたウォレットがパスワードにより保護されている場合に相続人が相続財産を円貨に交換出来ない可能性は十分にある

 

ビットコインをはじめとする仮想通貨が文字通り「貨幣」認定されるならば、課税上も、また消費税の取り扱いにおいても、当局およびビットコイン関連取引をきちんと税務申告したい主体においては、既存の外貨建取引と同等に扱われることから、より論点がすっきりすることと思われる。

しかしながら、その場合はこの「仮想通貨」をどう定義するか等、金融庁だけでは対処が困難な論点が少なくないため、日経記事の見出しのように「貨幣」認定されたと鵜呑みするにはもう少し気をつけたい。

 

もちろん、課税上の論点が明確になっても、実際に取引を把握したり、ビットコインを差し押さえたりする際にはさらなる課題が存在する。こうした国税通則法上や税務調査における論点も上記論文は取り扱っているので、興味のある方はぜひ一読されたい。