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自身のマイナンバーをネットに晒すユーチューバー現る その問題点は

 

YouTubeにて「Sayu Flatmound JOURNAL」チャンネルを運営する、さゆふらっとまうんど さんが、自身のマイナンバー*1(個人番号)を公開しました。

私のマイナンバーを公開します。 | さゆふらっとまうんどのHP ブログ

 

後述する理由もあって、その番号等の情報の引用はしません。

今回は本件について取り上げてみましょう。

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なお、こうした行為は

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律
第十九条  何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。


により禁じられております。
同条では十四号まで例外規定が列挙されていますが、当然に今回のケースに合致するものはありません。

念のため、「特定個人情報」の定義ですが、

「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」第二条
8  この法律において「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。第七条第一項及び第二項、第八条並びに第六十七条並びに附則第三条第一項から第三項まで及び第五項を除き、以下同じ。)をその内容に含む個人情報をいう。

となっております。

また、そうやってネットに晒されていた個人番号(マイナンバー)を見てしまった側の対応ですが、同法第二十条では、

第二十条  何人も、前条各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報(他人の個人番号を含むものに限る。)を収集し、又は保管してはならない。


となっていることから、一部サイトにみられるように、彼のアップロードした住民票の一部を転載する行為も同様に禁じられているものと考えられます。

しかしながら、それでも彼が自身のマイナンバーを公表してしまっても、すぐさま重大な問題が生じるかと言われれば、簡単にはそうとも言えなさそうです。
その理由をざっくり2つほど紹介してみましょう。


・理由1:公開する行為に特段の罰則が見当たらない

第十九条に示された例外を除き、特定個人情報を提供することは禁じられているというお話しでしたが、たとえそれをやってしまったところで、同法には第十九条の規定に違反してしまったことによる、何らかの罰則規定は見当たりません。

マイナンバーに関する各種啓発ポスターでも「法律で定められた目的以外での使用、他人への提供が禁じられています」程度の文言となっています。

 

・理由2:マイナンバーを知られたところで、ただちに実害はないとタカをくくっている

先日、内閣府のマイナンバー実務担当者である福田峰之氏が、週刊エコノミスト 2015年9月15日号に掲載されたとされる以下の文章が話題となりました。

仮に落としても暗証番号が分からなければ、拾った人は何もできない。
マイナンバーを知られたら情報が芋づる式に取られるというのは、まったくの事実誤認だ。
番号はただの「名前」。私が「福田峰之」と知られて、まずいことは何もないということと同じだ。
私は自分の番号が入ったTシャツを作ろうと思っている。番号を知られても問題がないということを、自ら実践する。
「大切にしなければいけないが、過敏に反応する必要はない」ということを理解してほしい。

sekine.cocolog-nifty.com

 

このインタビューを受けて、一部で「そもそも公表する行為は禁じられているはず」といったような指摘が出ておりましたが、その指摘そのものは上で述べてきたように正しいと思います。
ただ、福田さんの仰るように、じゃあマイナンバーだけ漏れたところでどうなんだ、という気持ちも分からないものではありません。

みずほのシステム開発があんな状況ではありますが、たとえ銀行口座とマイナンバーが紐付いたとしても、この点、福田さんが「番号を知られても問題がない」と主張することに、あまり変化はないように思います。*2

ただし、将来的にマイナンバーの利用範囲が拡大したり、悪用者の技術・ノウハウが高まるにしたがって、公開および漏えいのリスクがそれなりに大きくなる可能性そのものは否定できないでしょう。


もちろん、重ねて言いますが、内閣府の担当者という立場の方が、自身のマイナンバーをプリントしたTシャツを作る・外で着るなどということは言うべきでないと思いますし、皆さんも決して作らないでください。

なお、同インタビューにあります福田さんの、『システム業者は「マイナンバーが流出したら大変だから、おカネをかけて新システムを入れてくださいと営業している」という話をよく聞く』という、いわゆる「便乗商法」への福田さんからの警告は傾聴すべき箇所であると思います。


ここでもう1つ見ておきたいのは、こうした行為によってマイナンバーが拡散してしまった際に、被害を未然に防ぐ目的で、その番号を変更することが出来るかという点ですが、

Q2-5 マイナンバー(個人番号)は希望すれば自由に変更することができますか?

A2-5 マイナンバーは原則として生涯同じ番号を使い続けていただき、自由に変更することはできません。ただし、マイナンバーが漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められる場合に限り、本人の申請又は市町村長の職権により変更することができます。(2014年6月回答)

マイナンバー社会保障・税番号制度

に、それに関連しそうなQ&Aが記載されております。

「マイナンバーが漏えいして不正に用いられるおそれがあると認められる場合に限り」という記載から、自身で公開しているマイナンバーを削除しようともせず、何度も変更を求めるような場合がそれに当たるのかは分かりませんが、変更できる可能性はあるようです。

こうした点も、まあ大丈夫だろうとタカをくくる理由の1つにはなるかもしれません。


以上、少しばかりマイナンバー公開について述べてみましたが、今回、ある個人によるマイナンバーの開示は「マイナンバーは要らない」という主張のために行われたものであるとのことです。
そういうわけで、実際には理由2の「ただちに実害はないとタカをくくっている」というのは今回のケースに当たらないとは思いますが、福田峰之氏が実際にTシャツを作って国民の前に現れない限りは、政治的主張はさておき、「マイナンバー晒し」は絶対しないように、と当ブログでは警告しておこうと思います。

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*1:本人は「奴隷番号」と呼ぶ

*2:そうした状況にあっても、あなたが知っている他人のマイナンバーを利用して、その番号保有者の銀行口座残高等を知ることは基本的には不可能