同性婚でも住宅ローンを借りられる時代に 思わぬリスクには要注意
NHKニュースの13日配信記事、「同性カップルの住宅ローン 新たな取り組み始める」が話題となっている。
この記事は楽天銀行とリクルート住まいカンパニーが提携して提供している「楽天銀行LGBT*1住宅ローン」商品について、「2人で生活する意思をカップルが表明すれば、2人の合算した収入をローンの基準にする取り組みを先月から始め」ていると紹介。
また、「みずほ銀行でも、互いが後見人となる公正証書などを出せばパートナーを配偶者とする取り組みを先月から始めて」いるとし、LGBTカップルに配慮されたローン商品が広がっている現状を報じている。
後者のみずほ銀行の取り組みでは、現行の住宅ローン商品の取扱いを一部LGBTカップル向けに改定。
ペアローン*2や、所得合算の取扱いにおける「配偶者」の定義に同性パートナーを含める対応を行っている。
みずほ銀行の取り組みでは、当初は東京都渋谷区が発行するパートナーシップ証明書を提出できるカップルに限定されているが、冒頭の記事で紹介されている「楽天銀行LGBT住宅ローン」では、このような証明書等は提出する必要がないという。
ただ、楽天銀行では、その代わりに別の制限が設けられているため、ここで「楽天銀行LGBT住宅ローン」のメリットとデメリットを確認しておきたい。
「楽天銀行LGBT住宅ローン」ならではのメリット
- パートナーとの収入合算が可能で、婚姻した夫婦と同じように連生型団体信用生命保険の加入が出来る(必須)
- 連帯債務での申込みとなるため、連生型団信により、パートナーのいずれかに万一のことがあれば、全体の債務返済が免除となる
- パートナーシップ証明書の提出が不要
「楽天銀行LGBT住宅ローン」ならではのデメリット
- リクルート住まいカンパニーが運営する「スーモカウンター新築マンション」を通して、新築マンションの購入をするカップルしか申し込めない
- 保証料はゼロだが、融資事務手数料が「借入金額×2.16%」と高額
また、楽天銀行(連帯債務)・みずほ銀行(ペアローン)の場合共に、諸条件を満たせば住宅ローン控除が受けられ得ることがメリットとして考えられる。
(※適用とならないケースもありますので、検討の際は必ず事前にお近くの税務署にご確認ください。)
しかし、同性婚の場合には法的な離婚という概念がないものの、互いのパートナーシップを解消した場合には、連帯債務の場合・ペアローンの場合共に、どちらにも住宅ローン債務が残ってしまう。
もちろんこの際、2人で買った家について、居住していない側は住宅ローン控除を適用することは出来ない。
住んでいない住宅の費用負担をしぶしぶ引き受ける個人がいるのかはケース・バイ・ケースだが、パートナーシップの解消に伴って返済負担を変える場合には、思わぬ費用や税金の負担が発生したり、借り換え(書き換え)自体が出来ないケースも考えられうることには要注意である。
当初は家も買えて幸せであっても、何十年とパートナーシップを続けていくことが出来なかった場合には、このメリットが逆回転してしまうことも大いに考えられる。
また周知の通り、法的な配偶者への場合と比べて、パートナーへの相続や贈与の際には大きな税負担が生じることがあり得る点は、残念ながら国政でもまだまだ配慮される気配はない。
同性婚への法的な保護が脆弱なまま拡大していくLGBT市場。
冒頭の記事に対しては、「婚姻」関係にあるパートナーよりも、縛りがない分、事実婚パートナーの方が別れやすい傾向にあるのでは、との指摘もある。
もしそうなのであれば、今回のように便利な住宅ローンが登場する際には、消費者はより重大なリスクを同時に認識しておく必要があるだろう。