三浦市が総務省も焦る「ふるさと納税マジック」導入 そのトリックとは
神奈川県に三浦市という、マグロで有名な市があります。昨年私も京急「三崎まぐろきっぷ」で楽しく旅行させていただきました。
このきっぷ、品川からでも往復3,060円きっかりでお風呂も入れてお寿司とビールもいただけるという凄まじさ。日帰り旅行するにはまさに、これからの季節にピッタリといえるでしょう。
さて、そんな三浦市がふるさと納税に新たなチャレンジをぶっ込んでいるという記事を拝見しました。
特典をもらえるのは市外の人だけ。市はこの勢いを市内にも広げて歳入増を図ろうと、昨年7月、市民限定のふるさと納税制度「みうらっ子育成寄付金」の募集を始めた。
3万円以上だともらえる特典は、市民向けということで、市内の飲食店や自動車工場の利用券などをそろえた。寄付は子どもの教育事業などにあてるといい、14年度は17件、約76万円の申し込みがあった。
ただ市民からの税金は黙っていても入ってくる。なぜ市民限定で歳入が増えるのか。そのからくりは、ふるさと納税の仕組みを知ると見えてくる。
んで、実際見てみたんですけど、記事内の「ふるさと納税の仕組み」を知っても以下の部分が見えてこなかったんですよね。
三浦市の場合、例えば市民が1万円を寄付すると、控除と特典を出す費用を引いた場合、通常の税収より3160円しか増えず、コストに見合わない。ところが寄付が3万円だと1万560円に増え、採算が見込めると分かった。このため市外は1万円で特典を出すが、市民向けは3万円以上にした。
なぜ三浦市に寄附すると、個人住民税も控除されるのに、ふるさと納税の特典コストを負担してもなお、10,560円/30,000円も市に残ることになるのか。
というわけでこの機会にふるさと納税にもう少し詳しくなろうとその辺をちょっと調べてみました。
ふるさと納税による控除の仕組み
実際の控除の仕組みは公式の表を見たほうが早そうですね。以下は総務省「ふるさと納税など個人住民税の寄附金税制」より。
「ふるさと納税をしても2,000円は個人負担」といわれるのが左の「適用下限額」ですね。所得税の控除が5,600円くらいですから、その寄附金額*1からその合計7,600円を引いた残りは個人住民税から引かれることになります。
あれ。
記事本文内では「特典は2千円相当以上」と書いてあるわけですから、国と本人の負担が合計で12,560円以上はないと辻褄が合わなくなりますね。
そっか、所得割には県の分があったわ
というところで、ようやく個人住民税の所得割は概ね、県4:市町村6の比率で配分されていることを思い出しました。
それを踏まえて表にしてみたので以下をご覧ください。
※画像はクリックで大きくなります
モデルケースは総務省および全国の市町村の「ふるさと納税」解説ページでもよく用いられている例ですね。
モデルケースでは三浦市の平均より年収が高いですが、それより低くすると表中の「国負担」が減ってその分「県負担」+「三浦市負担」が増えますので、たとえば所得税率5%が適用される方の場合はざっくり「三浦市収入増」の金額が2,500円前後減る感じがしますね。
その場合、記事中の記述に違和感がなく、以上が「ふるさと納税マジック」のトリックだと見てよさそうな気がします。
しかしこれって…
でもこれって、上のケースでいえば国の負担5,717円と神奈川県の負担8,919円を三浦市のサイフの中に横取りしている構図ともいえるわけで、記事中にもありますように”制度の目的は「居住地でない自治体を応援する」というものだから、総務省は「本来の趣旨とは違う印象だ」。”というのはまさにその通りだと思います。
東京都の区役所も都会から流出する税収を戻すためにこの「ふるさと納税マジック」に関心を持っているとのことなので、加速してくると他の県民や国民にしわ寄せが行く格好となり、総務省だけでなく財務省の疑問符もさらに増えそうですが、利用する住民としては公共サービスの改善と特典目当てにとりあえず前向きに検討しておいて良さそうです。
※税金に関する判断の際はお近くの税理士さんにお尋ね下さい。
関連する過去記事と注意点
nots.hatenablog.com
そういえば上の記事で思い出しましたけど、今年からふるさと納税やる場合は申告不要制度が導入されたそうですね。
この「ワンストップ特例制度」ですが、いずれにせよ申告しなくても市町村に申請書を出さないといけないようです。
しかも、
この制度を利用すると、控除される税金が、今までは【所得税からの還付、住民税からの控除】だったのが、
すべて【住民税からの控除】となり、翌年度に住民税から控除されます。
とのことなので、申請忘れも勘案すると従来通り確定申告する方もそれなりにいらっしゃりそうだなと思ったのでした。
*1:控除額の範囲内である場合