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活発な市場が存在しない仮想通貨の会計処理、期末評価で1円まで切り下げも

財務会計基準機構(ASBJ)は14日、『実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」』を公表した。

 

実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」の公表|企業会計基準委員会:財務会計基準機構

 
おおむね既報のとおり、「活発な市場が存在する仮想通貨」については、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とすることとし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理すること」が示され、毎期末には「保有する仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所における取引価格」で評価替えが行われることとなった。

 

なお、何をもって「活発な市場」とするかについては個別判断となるが、ビットコインをはじめとして、「継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている」仮想通貨に関しては上記評価によるものと考えられ、たとえば「売手と買手の希望する価格差が著しく大きい場合には、通常、市場は活発ではないと判断されるものと考えられる」とのことから、取引所取引実績があったとしても、スプレッドが著しく大きい仮想通貨の期末評価に関しては、「活発な市場が存在しない仮想通貨の評価基準」に依るべきと判断されうる。


それでは、活発な市場が存在しない仮想通貨は、どのように期末評価がなされるべきか。
これについてASBJは「棚卸資産における期末評価時の時価を基礎とした正味売却価額の見積りが困難な場合の定め」を参考にしている。

 

通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準

9. 営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産について、合理的に算定された価額によることが困難な場合には、正味売却価額まで切り下げる方法に代えて、その状況に応じ、次のような方法により収益性の低下の事実を適切に反映するよう処理する。

 

(1) 帳簿価額を処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで切り下げる方法
(2) 一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法

 [PDF]棚卸資産の評価に関する会計基準 - 財務会計基準機構

 

活発な市場が存在しない仮想通貨は市場価格がなく、客観的な価額としての時価を把握することが困難な場合が多い。
ましてや、即座に換金したくても市場で思うように売却できないものも少なくない。

 

そのため、活発な市場が存在しない仮想通貨は、それ相応の収益性の低下を認識すべきとされ、上記(1)を参考に「資産の収益性が低下した場合、取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために回収可能価額まで帳簿価額を切り下げる会計処理」がなされることとなる。

これにより、

 

具体的な処分見込価額の見積りは、例えば、独立第三者の当事者との相対取引を行った場合の価額等、資金の回収が確実な金額に基づくことが考えられるが、資金の回収が確実な金額を見積ることが困難な場合にはゼロ又は備忘価額を処分見込価額とすることになると考えられる

 

実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」より

 

という。

 

したがって、未上場ゆえに上場まで転売出来ないような、よく分からないトークンや、「独立第三者の当事者との相対取引を行った場合の価額」で換金できるかが、そもそも怪しい仮想通貨については、「資金の回収が確実な金額を見積ることが困難な場合」に該当し、「ゼロ又は備忘価額を処分見込価額とすることになると考えられる」ということになる。

 

このため、そうした活発な市場が存在しない仮想通貨を入手した場合は、たとえば入手時の価格(貸借対照表価額)と、備忘価額(たとえば1円)との差額が当期の損失と認識されることになる。

 

また、損失を計上して簿価を切り下げた後には、保守的に切放し法のみが認められ、当該損失処理額については、将来に戻入れを行う処理は認められないこととなることにも注意が必要かもしれない。