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国税庁、個人のビットコイン売却益は「雑所得」と初見解 タックスアンサーに登場

国税庁は6日、同庁ホームページ内の「タックスアンサー」にて、「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」という資料を公表。

曖昧さの残る短い文章ながらも、個人がビットコインを使用することで生じた利益は、原則として雑所得に区分され、所得税の課税対象となるとの見解を初めて文書で示した。

 

2017/12/01: 追記

より詳しい資料が国税庁から発出されました!こちらをご覧ください。

nots.hatenablog.com

 

これにより、事業などに付随して売買等を行っていない、通常のホルダーは、たとえ仮想通貨取引で損を出しても、他の所得との損益通算は出来ないこととなる。

また、課税当局は現時点では、「ビットコイン」の使用に係る一部の論点に限った情報提供しか行っていないが、その他の仮想通貨に関しても、ひとまずは同様の税務処理が求められていくこととなる。*1

 

近年のビットコイン等の取引価格上昇に伴い急増している、仮想通貨を売り買いする個人投資家らに対し、正確な税務申告を促す意図があるものとみられる。

これまで、仮想通貨の税務上の取り扱いについて、当局からの情報提供は非常に少なかった。
ビットコインと税務について、初めて対外的に論じられたのは、おそらく2014年5月当時の大阪国税不服審判所次席国税審判官・土屋雅一氏による税大ジャーナル上の論文、その名も「ビットコインと税務(PDF)」と思われる。

 

この論文はビットコインに係る税務について、当時の段階で包括的に論じたものであり、大いに参考となったものだが、当時はまだビットコインが税法のみならず、資金決済法上の立ち位置なども決まっていなかったため、この論考では「ビットコインが消費税法上の無形資産に当たれば、その(国内での)譲渡は消費税の課税の対象となる」とされていた。

しかし、この取扱いはやがてG7各国でも付加価値税等の対象外とされることとなり、我が国でも今年7月1日から「仮想通貨」の消費税は非課税扱いとなった。


所得税においては、今回のタックスアンサーが公表されるまでは、個人の仮想通貨売買を通じた損益は、前述の論考などを受け譲渡所得とされる可能性もあり、投資家らはその場合の特別控除などの適用を期待していた向きもあった。

だが、このたび正式に「雑所得」*2と区分されることが文書として示され、損失が出た場合に他の所得との通算や繰越控除などは行われないこととなる。
(ただし、この損益が事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合は、雑所得ではなく、事業所得等それぞれの所得に区分される。)


また、近年では個人のみならず法人も仮想通貨を保有するケースが増えているが、この場合の法人税を算出するためには、まず仮想通貨に係る企業会計基準が定まる必要がある。

こちらは現在、企業会計基準委員会で審議が行われている最中で、年内には草案が公開される見通しとなっており、流通量の少ない仮想通貨を除けば、概ね時価評価を要する他の資産と同様の会計処理が求められる見込み。帳簿価額と時価との差額が当期の損益として処理されることとなれば、課税所得に影響を与えることとなる。


このたび公表されたタックスアンサーを受けて、仮想通貨投資家はいよいよ必要な税務申告から逃れにくくなる。無申告や著しい過少申告には大きなペナルティが課され、その際に支払うこととなるのは当然現金である。

また今回の資料では、「ビットコインを使用することで生じた利益」を「邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益」と説明し、ひとまず専ら仮想通貨を売買する投資家を念頭に置いた回答とみられるが、商品購入時の決済に用いる際に認識されうる交換差益が同様に「邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される」場合をはじめ、この他に課税関係が生じ得る可能性についても注意を要する。

 

未だ仮想通貨に対する課税上の取扱いの全体像は示されてはおらず、しばらくは国税当局も他の先進国と同様、包括的な見解を示さないものとみられるが、それでも仮想通貨保有者らには、妥当な税務申告が必要となるため、税務当局にはさらなる、一般消費者にも分かりやすい情報提供が求められている。

 

No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係(国税庁:2017年9月6日現在)

[平成29年4月1日現在法令等]

 ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。

 このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。

(所法27、35、36)

*1:それでも、取引相場の希薄な通貨など、同様に処理することが適切でない場合も十分に考えられる点など注意を要する。

*2:事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除く。